いやいや、気にしないのは、仁くんであって、山崎さんは、こんなの見せられたら呆れると思う。

「仁くん、お願い。下ろして?」

私が、消え入るような声でお願いすると、

「かわいい〜
ほんとは下ろしたくないけど、
絆がかわいいから、特別な?」

仁くんはそう言って、ようやく腕を解いてくれた。

だけど、今度は手を繋がれて、隣に座らされる。

なんだろう?
世の中の恋人たちは、みんなこうなの?
私が今まで付き合った人は、こんなにベタベタしなかったよ。
交際期間が短かったから?
そんなに好きじゃなかったから?

私が考えを巡らせていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「はい。」

仁くんが答える。

ドアが開いて、コーヒーを持った山崎さんが現れた。

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