「ちょ、仁くん!
みんな見てるから!」

私は仁くんの腕を叩く。

「大丈夫。
みんな信頼できるスタッフばかりだから。」

いやいや、そういう問題じゃないから。

「練習してなくても、こんなに情感たっぷり
弾けるなんて、やっぱり、絆のピアノは世界一
だよ。」

いや、そう言ってくれるのは嬉しいけど…

「仁くん、お願い。
恥ずかしいから、離して。」

私がお願いすると、ようやく、仁くんはその腕を解いてくれた。

「皆さん、絆は俺の専属ピアニストなんで、
写真も口外するのも禁止でお願いしますね。」

仁くんはスタッフの方々に向かって言う。

スタッフの皆さんがクスクスと笑いを零す。

私は、慌ててまた皆さんに頭を下げる。

「じゃ、絆、飯、食おう。」

仁くんは、私の手を引いて楽屋に戻る。

広めの控え室に、ケータリングが届いていた。

私は、仁くんと一緒に好きな物を取って食べる。

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