その後、コンサートが始まると、私は舞台袖から、スタッフの邪魔にならないように気をつけながら、仁くんの演奏を聴く。

私は、やっぱり、『絆』の演奏で泣いてしまった。



コンサート終了後、私は仁くんと共にホテルへと向かう。

用意されていたのは、最上階のスイートルームだった。


やっぱり、仁くんと同じ部屋なんだ。

どうしよう。
私は、ちゃんと言えるかな。
ううん、ちゃんと言うんだ。

私が、入り口で固まっていると、仁くんが私を抱き寄せた。

「絆? 大丈夫。
絆が嫌なら、今日は何もしないよ。」

仁くんは、腕を緩めて私の手を取ると、部屋の中へと導いた。

「絆、今日は移動したし、慣れない事ばかりで
疲れただろ?
お風呂でゆっくりしておいで。」

仁くんが優しい。

でも… 決めたんだ…

ちゃんと言わなきゃ。

「仁くん、あのね。」

私は仁くんに向き合った。

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