「じゃあ、俺の幸せは?
絆がいなきゃ、俺は幸せになんかなれない。」

「なれるよ。
私なんかより素敵な人は、世界中にたくさん
いるよ。
仁くんは、かっこいいから、きっとこれから
素敵な人に出会って恋をして結婚できるよ。」

「絆、それ本気で言ってる?」

「もちろん、本気だよ。」

仁くんは、唇を噛み締めて、天井を見上げる。

こめかみに光る物が流れた。

仁くん… ごめん…

「………仁くん、先にお風呂行ってきて。」

「嫌だ。絆はその間にいなくなるだろ。」

私は首を振った。

「いなくならないよ。
仁くんにね、最後のお願いがあるの。」

「何?」

「お風呂の後で言うから。
仁くん、お風呂、行ってきて。」

「………分かった。」

仁くんは、涙を拭って、お風呂へ向かった。

< 193 / 318 >

この作品をシェア

pagetop