仁くんは、そのまましばらく立ち尽くした後、強張った笑顔で、優しく私を抱き寄せる。

「おいで、絆。」

仁くんは、私の手を引いて寝室に向かう。

そこに私を横たえると、私の両脇に手をついて上から私を眺める。

私が目を閉じると、唇に温もりが落とされた。

仁くんが私に優しく触れる。

首筋から胸元へと口づけ、バスローブの紐が解かれる。


仁くんの長くて繊細な指

仁くんのあたたかい唇

仁くんの逞しい腕

仁くんの優しい温もり

忘れないように…

心と体で記憶に刻み付けて…

全身で仁くんを感じる。

仁くんを受け入れ、ひとつになる。

だけど…

私の胸には、無数の雫が落とされる。

仁くんの律動を感じながら、その暖かな雫が落ちては冷え、落ちては冷えていくのを感じる。

幾つも、幾つも…

仁くん、わがままでごめん。

仁くん、頑固でごめん。

仁くんを選べなくてごめん。

仁くん、愛してる…

仁くん…

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