「えっと…
会社の忘年会の時に、私の演奏を褒めて
くれて、結婚を前提にって交際を
申し込まれて、1度は断ったんだけど、
仁くんも断った事を洩らしたら、友人として
って言ってそばにいてくれて…」

「つまり、桐生が弱ってる絆に付け込んでる
って事だな。」

「え?」

私が驚いて顔を上げると、海翔くんは、
「はぁ…」
と呆れたようにため息を漏らした。

「絆、そんな状況で、桐生が純粋に親切心で
お前に接してると思ってたのか?」

私は首を横に振る。

「さすがにそれはないよ。
でも、話を聞いてくれて、相談に乗って
くれて…
気を紛らわせてくれるから、つい甘えて…」

「桐生はそうやって、お前の気を紛らわせて、
お前が仁を忘れるのを虎視眈々と
狙ってるんだよ。
あいつは、お前が思ってるより、ずっと
クレバーな男だぞ。」

< 238 / 318 >

この作品をシェア

pagetop