15時。

私は結ちゃんと会社を出て、会場に向かう。

ステージ上に、大きなグランドピアノが2台、向かい合わせで並んでいた。

「これは、圧巻だね」

私が言うと、

「ほんとね〜」

と結ちゃんが呑気に答える。


私は、深呼吸して、ピアノに向かう。

まずはハノンとクリスマスソングメドレーで指慣らし。

その後、深呼吸してから、2台のピアノのためのソナタ。

心を乗せて演奏する。



弾き終えて数秒、その余韻に浸っていると、突然、後ろから抱きしめられた。

「えっ!? 何!?」

驚いた私は、目一杯、振りほどこうとするけど、全く身動きができなくて、首だけ後ろを向いた。

そこには、やや色白で彫りの深い整った顔があった。

「絆、会いたかった。」

耳元で囁くように言われて、力が抜けた。

「仁(じん)くん…」


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