「すみません。
会場に綺麗な女性がいたので、
思わず見とれてしまいました。」

客席から、あたたかな笑いが漏れる。

仁くん…

その後、仁くんは私が1番好きな世界一のピアノを奏でた。

そして、アンコール曲に『絆』

仁くんは、今日も涙を零しながら、演奏した。

私もまた涙が止められなかった。


終演後、1人客席で涙を押さえてると、

「絆…」

と呼ばれた。

「仁くん…」

「絆、来てくれたんだね。」

「春山部長にチケットをいただいて…」

「………そうか。」

「あの、仁くん…」
「絆!」

私が口を開くのと、仁くんが私を呼ぶのは同時だった。

「絆、俺、ピアノ辞めない。
だけど、絆も諦めたくない。
絆が遠距離が嫌なのは分かった。
だから、絆、一緒に世界を回ろう。」

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