「はいはい。
あなたは、絆が遠くへ行っちゃうのが
嫌なのね。」

お母さんが言う。

お父さんは、図星を突かれようで、ブスッと無言で座っていた。

「これは、まだ絆とは相談してなくて、
俺1人の考えなんですが…」

と仁くんが口を開いた。

「新居は、この近くに構えたいと思ってます。」

「え?」

私たち親子は口を揃えて驚いた。

「将来、子供ができた時の事を考えると、
その方が安心だと思うんです。
俺の仕事は、夜、遅くなる事が多いですし、
地方や海外に行く事も多いですから、何か
あった時に、すぐそばに絆が頼れる人が
いてくれる環境がいいと思うんです。」

お父さんが前のめりになった。

「じゃあ、ここに住めばいい!」

いやいや、お父さん?
それはないでしょう。

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