5日後の金曜日、私は有休を取った。

仁くんと記者会見に出るため。

会見場は、あの忘年会をした部屋。

今日も2台のピアノが置かれている。

私は、仁くんと共に、一礼して入室する。

私が着ているのは、あの時、仁くんが用意してくれたローズピンクのドレス。


仁くんが立ったまま、マイクを持つ。

「本日は、お忙しい中、お集まりいただき、
ありがとうございます。
まずは、モーツァルト
『2台のピアノのためのソナタ』
をお聴きください。」

すると、記者から声が上がる。

「我々は、記者会見に来たんです!
コンサートに来た訳じゃありません!」

「演奏の後、お話します。
ほんの5分です。
それが嫌な方は、お帰りいただいて
構いません。」

仁くんは、マイクを置いた。

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