「ああ!
ありがとう。通してくれ。」

専務がにこやかに微笑んだ。

俺は振り返って、

「どうぞ。」

と女性のためにドアを大きく開けた。

「わざわざ、ありがとうございました。」

女性に優しく微笑まれて、俺はドキッとした。

ドアを閉めようとした時、中の会話が漏れ聞こえた。

「絆、いらっしゃい。」

「海翔くん!
もう、よく分かんなくて、ドキドキしたよ!」

なんだ? この会話。

愛妻家と評判の専務に愛人?

あんなに若くて綺麗な子が?

いや、専務もダンディなイケメンだから、ありなのか?

いやいや、それでも年の差、30はありそうだぞ?

もったいない。

何がもったいないのか分からないが、俺は専務に失望していた。

今、思えば、あれはただの嫉妬だったんだ。

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