「羨ましい?」

「だって、出世し放題だろ。
あれだけ美人だし、みんな目の色変えて
口説きまくってるらしいぞ。」

それは嫌だ。

ん?
何が嫌なんだろう?

自分でもよく分からない感情を持て余しながら、俺は毎月彼女を見送る。


・:*:・:・:・:*:・

そんな日々を繰り返して7年目の春、俺は同期で1番初めに主任になった。

責任ある仕事も増え、充実した日を送っている。

そんな時、忘年会でピアノを弾く彼女を見て、ようやく気づいたんだ。

ああ! 彼女が好きだって。

俺は、思い切って声を掛けた。

デートにも誘った。

他の奴と同じように出世目当てだと思われたくなくて、専務や本部長の事は知らないふりをした。

彼女は美人なだけじゃない。

優しくて、明るくて、素直で、愛くるしい。

知れば知るほど、心を鷲掴みにされていく。

だけど、彼女には思う人がいる。

それでも、俺は、自分の思いを止められない。

仕事では冷静沈着と定評のある俺が、だ。
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