彼女が誰を見ていてもいい。

俺は、既に冷静さを欠いていた。


俺は、言葉巧みに、素直な彼女を取り込んでいく。

だけど、彼女には、彼女を大切に思い、守ろうとする人が大勢いた。

あっという間に、彼女の手は俺から離れ、遠くへ旅立っていった。

『さよなら』すら、言えなかった。

そんな落胆する俺のところに、専務が来た。

「絆から預かった。
これは、君に返すよ。」

俺が彼女に送ったプレゼント。

こんな物、返されても困るだけだ。

捨ててくれればよかったのに…

俺は、いつか彼女を忘れる事が出来るんだろうか?

いつか、他の誰かを好きになれるんだろうか。

絆さん…

もっと早く、自分の思いに気づけばよかった。

もっと早く行動していれば、彼女は自分の思いに気づく事なく、俺のものになってくれていたかもしれない。

もっと早く…

悔やんでも悔やみきれない。

願わくば、彼女が今、幸せでありますように…


─── Fin. ───
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