しかし、コンクールは悲惨な出来だった。

今まで、賞を欲しいままにしてきた俺が、初めて地方予選で敗退した。

教授も両親も呆れるやら怒るやら、散々お説教を食らい、フランスの母方の祖父母の所へ強制収容される事になった。

スマホも向こうで新しくされ、連絡先から絆を消された。

「音楽と恋を両立できる大人の男になれ。」

親父にそう言われ、俺は絆に会いたい一心で音楽を頑張った。

その甲斐あって、22歳の時、国際コンクールで優勝し、ピアニストの道を歩み始めた。

その時にしたエージェントとの契約で5年間はヨーロッパを中心に活動をせざるを得ない状況が続いた。

そして、その5年が終了して、まず俺が希望した事は、日本での活動だった。

とりあえず、3ヶ月。

その3ヶ月で日本を拠点に活動できる実績を作る。

そして、それをもとに今後の展開を考える。

俺は、そのために帰国した。
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