仁くんにそう言われて、私はそれ以上断れなくなってしまった。

仁くんの呼吸に合わせて演奏を始める。

あれ?

なんだろう?

すごく気持ちいい…

学生の頃、同級生と弾いてたのとは、全然違う。

ふふっ

なんだか、楽しい。

こんなに楽しくピアノを弾くなんて、何年ぶりだろう?

5分以上ある曲なのに、楽しくてあっという間だった。

「仁くん!
もう一回、いい?」

「もちろん。」

私たちは、もう一度演奏する。

何度も演奏するうちに、さらに呼吸が合って、どんどん気持ちよくなる。

5回弾いた所で、仁くんが言った。

「絆、幻想即興曲、弾いてみろよ。」

「え?」

「弾けるんだろ?」

「うん。
でも、なんで?」

「ほら、早く。」

「うん…」

よく分からないまま、私は幻想即興曲を演奏する。
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