「うん。
じゃあ、絆、今夜、これも演奏するぞ。」

「は?
仁くんが弾いた方がいいじゃない。」

「いや、これは、絶対、絆の方がいい。」

なんだか、腑に落ちないけど、私に仁くんの言うことを否定できる訳もなく、言いくるめられてしまった。

「じゃあ、ここからは、俺のリハの時間。
絆は控え室で着替えて待ってて。」

「え?
私、着替えなんて持ってきてないよ?」

私は、スーツのまま、飛び入りの形で演奏するつもりでいた。

「俺が用意しておいた。
ほら、行っておいで。」

そう言われて、私は、仁くんに追い出されてしまった。

< 31 / 318 >

この作品をシェア

pagetop