「じゃ、これ、栗原に渡してやってくれ。
今週末のチケットだ。」

俺は、今週末、たまたま東京で行われる息子のコンサートチケットを伊藤に託した。

「あ、じゃあ、チケット代…」

伊藤が慌てて財布を取りに行こうとするから、俺は止めた。

「いいよ。そんなの。
もしかしたら、親戚になるかもしれないし?」

俺が笑うと、伊藤も顔を綻ばせた。

「あ、この事、小川には言うなよ。
あいつ、栗原を溺愛しすぎてて、相手が
仁だろうと、他の誰だろうと邪魔するに
決まってるから。」

ほんと、栗原は愛情過多で育ったから、あんなに天真爛漫なんだろう。

仁が惚れるのも、分からなくもない。

だけどなぁ…
栗原はともかく、親がなぁ…


─── Fin. ───
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