本当にそう思う。

世の中、私と同じくらい複雑な環境で生まれ育つ子は他にもいるかもしれない。

だけど、その全ての人から愛情を受けて育ったのは私くらいだ。

だって、もし私が奈々ちゃんや天くんの立場だったら、私をかわいがるなんて、絶対無理だと思う。



私は、自分でメイクを直して、ドレスに着替える。

「結ちゃん、どう?
変なとこ、ない?」

「ふふっ
綺麗よ、絆。
私の子とは思えないくらい。
海翔に似てよかったわね。」

結ちゃんは笑う。

「ふふっ
私も、手が大きいのは、海翔くんに似て
よかったと思う。
結ちゃんの手じゃ、1オクターブしか指が
届かないもん。」

ピアノは、手が大きい方が何かと有利だ。

リストやラフマニノフは、自分の手が大きかったから、手が小さい人には弾けない曲がたくさんある。

< 34 / 318 >

この作品をシェア

pagetop