絆

仁くんにピアノまでエスコートされ、スカートを摘んで仁くんと共に挨拶をする。

2人、それぞれのピアノに着席をし、呼吸を整える。

向かいのピアノから、仁くんが微笑んでくれる。

笑顔が、大丈夫って言ってくれてる。

私は深呼吸して、仁くんに視線を送る。

仁くんの呼吸で演奏開始。



やっぱり、仁くんとの演奏は気持ちがいい。

音が心に染み渡る。

ふふっ
楽しい…




あっという間に演奏が終わってしまった。

余韻に浸っていると、会場から大きな拍手が湧き起こる。


私は、席を立ち、再び、ドレスをつまんで挨拶をする。

私がステージを降りると、仁くんのソロ。



ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』

仁くんの力強い低音のフォルテから始まる鐘の音。

私では絶対に弾けない重々しさ。

胸が絞られるような息苦しさを感じる。

その直後、重い空気を消し去るような優しい音色。

やっぱり仁くんのピアノは私の心を思いっきり揺さぶってくる。




仁くんの荘厳なピアノの余韻に浸る中、次は私の幻想即興曲。

ショパンの繊細で切ない音色が、会場の空気を溶かしていく。