着替えた私は、隣の仁くんの控え室をノックする。

「はい。」

返事と共に扉が開き、黒いハイネックのニットにブルーデニムのラフな仁くんが現れた。

ふふっ
夏休みに遊びに来てくれた仁くんを思い出す。

タキシードもかっこいいけど、私はこっちの方が親しみやすくて好き。

そういえば、一緒に手を繋いで科学館とか行ったなぁ。

あれ以来、プラネタリウムって、行ってないな。

「なに?」

仁くんが聞く。

「え? 何が?」

「絆ひとりでニヤニヤ笑ってるから。」

仁くんが屈んで私の顔を覗き込む。

「え? 別に、ニヤニヤなんてしてないし。」

「いや、してたよ。
絆、何、考えてた?」

「………昔のこと。」

「昔のこと?」

「仁くんとプラネタリウム見たなぁ…とか。」

「とか?」

「仁くん、タキシードもかっこいいけど、
こっちの方が好きだなぁとか。」

私がそう言った直後に、仁くんは右手で口元を覆った。
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