「ごめんなさい。
私、今、名刺を持ってなくて。」

「大丈夫です。
一本の栗原さんですよね?
さっき、紹介されてましたから、
覚えてます。」

そう言って、男性は柔らかく微笑んだ。

「あ、そうでしたね。
桐生(きりゅう)さんは入社何年目なんですか?」

「7年目です。一本だと、安藤や吉沢たちと
同期です。」

「ああ、じゃあ、須原さんもですよね?
私、須原さんの下で働いてるんです。」

「そうでしたか。
須原は神経質で細かいから、大変でしょう?」

「ふふっ
そこは、ノーコメントで。」

私が笑うと、桐生さんも笑った。

「栗原さんは、お付き合いされてる方は
いらっしゃるんですか?」

「いいえ。
私、全然モテないので。」

私がそう言い終わるや否や、突然、肩を抱き寄せられた。
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