「そんな事ないよ。
絆のピアノは優しくて、心に染み渡る
いいピアノだよ。
俺は、どんなに頑張っても絆みたいには
弾けないもん。」

「仁くん、褒め上手だねぇ。
間に受けそうになっちゃうよ。」

仁くんは、ステージ袖から椅子をもう一つ持ってきた。

「絆、連弾しよ。」

「何を?」

「んー、じゃあ、モーツァルト!」

「ふふっ
きらきら星でも弾く?」

「お、いいね。」

仁くん、楽しそう。

私は、きらきら星変奏曲を奏でる。

仁くんは、それに合わせて低音を入れる。

ふふふっ
やっぱり、仁くんとのピアノは楽しい。

時々、仁くんと顔を見合わせ、息を合わせる。

演奏を終えると、拍手が聞こえてきた。

「教授!!」

仁くんが立ち上がる。

私も立って、会釈をする。

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