ハ短調の繊細で切ないメロディ。

途中、フォルテで抑えきれない激情が溢れて伝わる。

胸が苦しくなる。

最後は穏やかで暖かな旋律。

仁くんに包まれて守られてるみたいな…



どうしよう。

涙が止まらない。

仁くん、ごめん。

冗談じゃなかったんだね。

こんなに思ってくれてるなんて、知らなかった。



周りがスタンディングオベーションする中、私は1人、座ったまま泣きじゃくっていた。

周りからは、絶対、変な目で見られてるのは分かってたけど、どうやっても止められなくて、必死で嗚咽を押し殺して、でも、抑えきれなくて、みんなが席を立ち、会場が空になっても、まだ私の感情は整理できないままだった。

仁くんは、楽屋に来いって言ってたけど、こんな泣き腫らした目で、化粧も崩れまくった顔で、仁くんに会いになんて行けないよ。

これじゃ、きっと、100年の恋も冷めるよ。

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