私は、仁くんを思いながら、大きく深呼吸する。

私はリストが好きで、何度も弾いた。

リストなら、ほぼ全ての曲を楽譜なして弾ける。

私は仁くんを思いながら、演奏する。

さすがコンサートピアノ。

コンサートホールの音響もあり、普通のグランドピアノとは、音が全然違う。

私は気持ちよく奏でる。

演奏を終えると、仁くんが後ろから抱きしめてきた。

「ほら、まだ、気付かない?」

「何に?」

仁くんの言う事は、訳が分からない。

「数あるリストの曲の中で、何でその曲を
選んだの?」

「なんとなく。」

私が弾いたのは、愛の夢第1番『至高の愛』。

「絆のピアノからは想いが溢れてるのに、
絆はその想いに全然気付いてないなんて、
ほんとタチが悪い。」

そう言いながらも、仁くんはくすくす笑ってる。

「いいよ。
俺、3ヶ月は日本を拠点に活動する
予定だから、その間に気付かせてみせるよ。」
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