いちごジュースのお店
森のかみさまは、じっと、少女をみつめました。少女は、うそをついたことを、きゅうにはずかしくなりました。でも、本当のこともいえませんでした。
涙が、でそうになったときでした。
森のかみさまが、いいました。
「ねがいごとはありますか」
とまどっていると、リスがいいました。
「森のかみさまは、なんでもおねがいをきいてくれるのよ」
とつぜんのことに、少女はおねがいごとがうかんできません。今は、ただ、悲しいだけでした。
「森のかみさまは、いつも、おじいさんとおばあさんとあなたが、大切にやさいをそだてているのをしっているんです。だから、おねがいごとをかなえてあげるといっているんです」
キツネがいいました。
「ほんとうに、いいのでしょうか」
「あなたは、いつもお手つだいをしてきました。一つだけ、ねがいごとをかなえてあげましょう」
森のかみさまの声は、とてもやさしい声でした。
「とてもやさしいから、だいじょうぶ」
リスが、いいました。
「いつも、みんながいっしょうけんめい、はたらいていることを知っているから、おねがいごとをきいてくれるんですよ」
キツネがいいました。
少女は、おねがいごとを考えました。いちばんさいしょにうかんだのは、いちごジュースをうってくれなかったおばあさんでした。つぎに、心にうかんだのはみどり色のスカートを、いつもていねいにあらってくれる、お家のおばあさんと、どんな人にも親切なおじいさんでした。
少し考えていると、あるねがいごととがうかびました。
「はい、わかりました」
森のかみさまは、いいました。
「そのねがいごとを、かなえてあげましょう」
リスとキツネは、おおよろこびでした。
「よかったね」
「よかったね」
くちぐちに、いって、少女のまわりをとびまわりました。
「ねがいごとをかなえるためには、やくそくがあります」
少女は、びくっと、しました。リスとキツネは、とびまわるのをやめました。
「ねがいごとをかなえるためには、今日から、一年間、おじいさんとおばあさんのお手つだいをすること。そして、一年がたったら、その日から、十日間、何があっても、家からでてはいけません。十日がすぎたら、海べの街に行ってごらんなさい。あなたのねがいごとが、かなっているかどうかが、わかります」
「だいじょうぶですとも!」
こたえたのは、リスでした。
「わたしたちが、みていますから」
キツネも、こたえました。
少女は、こくりと、うなづきました。
「もう一つ、あるのです」
リスが、ぴくんと耳をたてました。キツネは、おすわりをして、しんみょうになりました。
「このやくそくをだれにも話をしてはいけません」
リスと、キツネは、目があいました。
「わたしたちもですか?」
「もちろんです。リスさんも、キツネさんも、だれにも、話をしてはいけません」
リスとキツネは、こくりと、うなづきました。
それから、森の家へ帰るまで、少女は、涙をながしませんでした。そのかわり、ずっと、森のかみさまとのやくそくを考えていました。
つぎの日から、いっしょうけんめい、少女は、はたらきました。おじいさんも、おばあさんもおどくばかりでした。
あつい夏の日は、たくさんの野菜に、水をあげました。インゲンまめ、かぼちゃ、オクラ、カブのみがなると、一つ一つ、ていねいに収穫し、おばあさんにりょうりしてもらい、おばあさんのりょうりの、お手つだいもしました。
秋になると、小麦をうえました。
「おばあさん、春になって、この小麦のみがなったら、パンをやいてくれる?」
「もちろんですよ。あなたのすきな、ぶどうパンを、やいてあげますよ」
少女は、とてもうれしくなりました。
雪のふるさむい日は、おじいさんにかわって、まきわりもしました。おじいさんは、あぶないから、だいじょうぶだよ、といいましたが、少女は、おじいさんの手のしわをみると自分がやらなくては、とおもったのでした。
春になりました。
森は新しい季節をむかえて、おおよろこびでした。小鳥は歌い、草花はかおり、生まれたことのよろこびを、体中であらわしていました。
ある日の朝、おばあさんがいいました。
「今日は、あなたの大すきなぶどうパンをやきましょう」
おばあさんは、秋にやくそくしたことをおぼえてくれていました。
「ありがとう」
少女は、とてもうれしかったのですが、気になることがありました。
一年前、森のかみさまとやくそくした日がきたのです。今日から、十日間、何があっても、家からでてはいけないのです。
とても天気のよい日だったので、おじいさんは、畑しごとにでようとしました。少女は、おじいさんをとめました。
「おじいさん、今日は、お天気がいいけれど、おばあさんのやくぶどうパンを、いっしょに食べましょう」
少女のことばに、おじいさんは、おばあさんのやくぶどうパンを、食べることにしました。
次の日も、とてもよいお天気でした。おじいさんは、畑しごとにでようとしました。おばあさんは、木の実をとりに森にいこうとしました。
「おじいさん、おばあさん、まってちょうだい。お家からでないでちょうだい」
やくそくした日から、十日間、外にでてはいけません。森のかみさまとのやくそくをだれにも話してはいけないのです。
「どうしたんだい。こんなに、よいお天気なのに、家の中で、なまけているわけにはいかないだろう」
「そうね、とてもよいお天気ね。でも、今日は、どうしてもおばあさんにししゅうのしかたをおそわりたいの。できたししゅうを、おじいさんにみてもらいたいの」
おじいさんも、おばあさんも、とてもこまった顔をしました。
いつも、とてもよくお手つだいをしてくれる少女のいうことなので、おばあさんはししゅうを教えてあげて、おじいさんは少女がさした、ししゅうをみてあげました。
やくそくした日から、三日めのことでした。
とてもよいお天気で、おじいさんは、畑しごとにいこうとしました。おばあさんは、森へ木のみをとりにいこうとしました。
少女は、とてもこまりました。三日めになると、はたきものの、おじいさんとおばあさんをひきとめるりゆうがなかったのです。
おじいさんは、クワをもち、おばあさんはカゴをもち、さあ家をでようとしました。どうしましょう、どうしましょう。少女がこまっているときでした。
涙が、でそうになったときでした。
森のかみさまが、いいました。
「ねがいごとはありますか」
とまどっていると、リスがいいました。
「森のかみさまは、なんでもおねがいをきいてくれるのよ」
とつぜんのことに、少女はおねがいごとがうかんできません。今は、ただ、悲しいだけでした。
「森のかみさまは、いつも、おじいさんとおばあさんとあなたが、大切にやさいをそだてているのをしっているんです。だから、おねがいごとをかなえてあげるといっているんです」
キツネがいいました。
「ほんとうに、いいのでしょうか」
「あなたは、いつもお手つだいをしてきました。一つだけ、ねがいごとをかなえてあげましょう」
森のかみさまの声は、とてもやさしい声でした。
「とてもやさしいから、だいじょうぶ」
リスが、いいました。
「いつも、みんながいっしょうけんめい、はたらいていることを知っているから、おねがいごとをきいてくれるんですよ」
キツネがいいました。
少女は、おねがいごとを考えました。いちばんさいしょにうかんだのは、いちごジュースをうってくれなかったおばあさんでした。つぎに、心にうかんだのはみどり色のスカートを、いつもていねいにあらってくれる、お家のおばあさんと、どんな人にも親切なおじいさんでした。
少し考えていると、あるねがいごととがうかびました。
「はい、わかりました」
森のかみさまは、いいました。
「そのねがいごとを、かなえてあげましょう」
リスとキツネは、おおよろこびでした。
「よかったね」
「よかったね」
くちぐちに、いって、少女のまわりをとびまわりました。
「ねがいごとをかなえるためには、やくそくがあります」
少女は、びくっと、しました。リスとキツネは、とびまわるのをやめました。
「ねがいごとをかなえるためには、今日から、一年間、おじいさんとおばあさんのお手つだいをすること。そして、一年がたったら、その日から、十日間、何があっても、家からでてはいけません。十日がすぎたら、海べの街に行ってごらんなさい。あなたのねがいごとが、かなっているかどうかが、わかります」
「だいじょうぶですとも!」
こたえたのは、リスでした。
「わたしたちが、みていますから」
キツネも、こたえました。
少女は、こくりと、うなづきました。
「もう一つ、あるのです」
リスが、ぴくんと耳をたてました。キツネは、おすわりをして、しんみょうになりました。
「このやくそくをだれにも話をしてはいけません」
リスと、キツネは、目があいました。
「わたしたちもですか?」
「もちろんです。リスさんも、キツネさんも、だれにも、話をしてはいけません」
リスとキツネは、こくりと、うなづきました。
それから、森の家へ帰るまで、少女は、涙をながしませんでした。そのかわり、ずっと、森のかみさまとのやくそくを考えていました。
つぎの日から、いっしょうけんめい、少女は、はたらきました。おじいさんも、おばあさんもおどくばかりでした。
あつい夏の日は、たくさんの野菜に、水をあげました。インゲンまめ、かぼちゃ、オクラ、カブのみがなると、一つ一つ、ていねいに収穫し、おばあさんにりょうりしてもらい、おばあさんのりょうりの、お手つだいもしました。
秋になると、小麦をうえました。
「おばあさん、春になって、この小麦のみがなったら、パンをやいてくれる?」
「もちろんですよ。あなたのすきな、ぶどうパンを、やいてあげますよ」
少女は、とてもうれしくなりました。
雪のふるさむい日は、おじいさんにかわって、まきわりもしました。おじいさんは、あぶないから、だいじょうぶだよ、といいましたが、少女は、おじいさんの手のしわをみると自分がやらなくては、とおもったのでした。
春になりました。
森は新しい季節をむかえて、おおよろこびでした。小鳥は歌い、草花はかおり、生まれたことのよろこびを、体中であらわしていました。
ある日の朝、おばあさんがいいました。
「今日は、あなたの大すきなぶどうパンをやきましょう」
おばあさんは、秋にやくそくしたことをおぼえてくれていました。
「ありがとう」
少女は、とてもうれしかったのですが、気になることがありました。
一年前、森のかみさまとやくそくした日がきたのです。今日から、十日間、何があっても、家からでてはいけないのです。
とても天気のよい日だったので、おじいさんは、畑しごとにでようとしました。少女は、おじいさんをとめました。
「おじいさん、今日は、お天気がいいけれど、おばあさんのやくぶどうパンを、いっしょに食べましょう」
少女のことばに、おじいさんは、おばあさんのやくぶどうパンを、食べることにしました。
次の日も、とてもよいお天気でした。おじいさんは、畑しごとにでようとしました。おばあさんは、木の実をとりに森にいこうとしました。
「おじいさん、おばあさん、まってちょうだい。お家からでないでちょうだい」
やくそくした日から、十日間、外にでてはいけません。森のかみさまとのやくそくをだれにも話してはいけないのです。
「どうしたんだい。こんなに、よいお天気なのに、家の中で、なまけているわけにはいかないだろう」
「そうね、とてもよいお天気ね。でも、今日は、どうしてもおばあさんにししゅうのしかたをおそわりたいの。できたししゅうを、おじいさんにみてもらいたいの」
おじいさんも、おばあさんも、とてもこまった顔をしました。
いつも、とてもよくお手つだいをしてくれる少女のいうことなので、おばあさんはししゅうを教えてあげて、おじいさんは少女がさした、ししゅうをみてあげました。
やくそくした日から、三日めのことでした。
とてもよいお天気で、おじいさんは、畑しごとにいこうとしました。おばあさんは、森へ木のみをとりにいこうとしました。
少女は、とてもこまりました。三日めになると、はたきものの、おじいさんとおばあさんをひきとめるりゆうがなかったのです。
おじいさんは、クワをもち、おばあさんはカゴをもち、さあ家をでようとしました。どうしましょう、どうしましょう。少女がこまっているときでした。