いちごジュースのお店
地めんのそこのおくふかいところから、大きな音がしました。大きな音は、じょじょに地上にあがってきたかとおもうと、大きなゆれとなりました。
「地しんだ!」
 おじいさんはおどいて、おばあさんと少女をテーブルの下にみちびきました。
 大地が、ゆれていました。
 森が、ゆれていました。
 世界中がゆれて、森の木は、空のかなたへとんでいきそうなきおいでした。
 長いゆれのあいだ、ときどき、テーブルに頭をぶつけましたが、三人はじっとゆれがおさまるのをまちました。
 やっと地しんがおさまると、おじいさんは、畑のようすをみに、外へでようとしました。
「おじいさん、まだ、外はあぶないとおもうの。畑にはいかないほうがいいとおもう」
「うん、そうだな。まだ、あぶないかもしれない」
 おじいさんは、窓から外のようすをみました。
 しばらくすると、パチパチという音がしてこげくさいにおいがしてきました。
「かじだ!」
 森のおくにオレンジ色のほのおがみえました。あのほのおは森をつつんでしまうでしょう。少女は、森のかみさまとのやくそくをおもいましたが、このまま家にいては、あぶないとおもいました。おじいさんとおばあさんをたすけなければいけないとおもいました。
 少女が、外にでようとしたときでした。まどにリスのすがたがみえたのです。
 リスは、少女をじっとみつめて、なんどもうなずきました。それをみていたおばあさんがいいました。
「もしや、あのリスは、外にでてはいけないといっているのかしら」
 おじいさんも、いいました。
「そうかもしれない。あのリスは、何かをいいたげだよ。外にでてはいけないのかもしれない」
 森は、どんどんもえていきました。ほのおは、三日みばんきえませんでした。
 七日めになると、雨がふってきました。ほのおの森に、雨がふりました。
 雨も、三日みばんふりつづきました。
 やくそくをした十日めの朝は、とてもよいお天気でしたが、森のふうけいは、いっぺんしていました。山はくずれ、緑はやけ、どうぶつたちはどこへいったのかもわかりません。おじいさんとおばあさんは、ことばもありませんでした。
「今日は、一日、おやすみしましょう。明日になったら、わたしが森や、海べの街のようすをみてきます」
 少女のことばに、おじいさんとおばあさんはうなずきました。
 やくそくの十日間がすぎました。
 少女は外へでると、畑のようすをみにいきました。大きなだんさは、畑のよこにできていたので、インゲンやかぼちゃはだいじょうぶでした。
 つぎに、海べの街に行きました。森のように木がもえていませんでしたが、たてものはところどころくずれていました。
 ねがいごとを森のかみさまはきいてくれたのでしょうか。少女は、どきどきしていました。やくそくをまもっていたと、森のかみさまはみとめてくれたのでしょうか。
 少女は、いちごジュースのお店に行きました。お店には、たくさんの人がならんでいました。いじわるだったおばあさんは、にこやかにいちごジュースを売っていました。みなりにかんけいなく、どんな人にもいちごジュースをうっていました。
 少女は、涙がでてきました。
「いちごジュースのお店のおばあさんが、お家のおばあさんのように、やさしくなりますように」
 少女がおどろいてふりむくと、森のかみさまが立っていました。
「あなたのねがいごとは、かねられました。よくがんばりましたね」
「よかったですね」
 リスが、いいました。
「おききしてもいいですか」
 キツネが、いいました。
「どうして、いちごジュースのお店のおばあさんが、やさしくなるといいとおもったのですか」
「お家の、おばあさんやおじいさんのように、やさしい人がふえるといいなとおもったのです」
「なるほど」
 キツネは、うなづきました。
 海べの街の、いちごジュースのお店緩解は、いつまでもにぎわっていました。

              (了)








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