残念な王子とお節介な姫
駅から課長の家へ向かう途中で、うちは言った。

「課長、お酒、こうてきません?」

課長は、目を丸くして、

「姫、今日まだ火曜だぞ?」

と答える。

「別に火曜でも水曜でもええやないですか。
朝まで飲む、ゆうてる訳やないんやから。」

「いいけど、ほどほどにしとけよ?」

「はーい。」

うちは返事と共にコンビニに入った。

課長に下心がない事は分かってる。

せやけど、酔った勢いでなら、何かが起こるかもしれへん。

「課長は、何、飲みます?」

「姫は、何がいいんだ?」

「和食やから、日本酒かなぁ。」

うちはそう言って、一升瓶を手に取った。

「おい! それは多すぎだろ!」

課長が焦り始める。

「残ったら、また明日飲みに来ますから。」

そしたら、明日も課長と過ごせる。

「は!?
明日も来る気かよ。」

「ダメですか?」

「くくっ
気持ちいいくらい、図々しいな。
まあ、いいや。
好きにしろ。」

課長がそう言うから、うちはほんまに一升瓶を持ってレジに並んだ。
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