愛のない部屋
鼻歌を口ずさみながら帰ったタキを見送って、部屋に閉じ籠った。
約束を破って、嘘までついた峰岸に夕食をご馳走する義理なんてない。
1時間置きに掛かってくるアイツからの電話を全て無視した。
チャーハンと、餃子はまた今度だな。
「ホント、最低」
文句を言ってやろうと思ってたのに、
土下座でもしたら許してやろうと考えていたのに、
峰岸は夕食の時間になっても、
日付が変わっても、
帰っては来なかった。
枕に顔を埋め、ぎゅっと布団を握り締める。
ひとりで過ごす夜は静寂以外のなにものでもなくて。
理由もなく、不安だった。
昔のことを思い出すのも、
こんな寂しい夜だ。
私が初めて本気で好きになった人は
15歳も年上の
大人な男性だった。