愛のない部屋
寝れない夜を過ごして朝を迎えれば
峰岸が帰宅した気配を感じ取った。
気を遣っているのか静かに廊下を歩く音が、余計に私の気を散らせた。
自分の家なのだから堂々として帰ってくれば良いのに。
朝帰りして咎められる年齢でもないし、ましてや仕事帰りの設定でしょう?
――トントン
と、遠慮がちに部屋をノックする音が聞こえても
寝たフリを続けた。
朝っぱらから喧嘩なんてしたら一日中、気分が悪くなる。
それなのに峰岸は部屋の扉をそっと開けた。
私が鍵を掛けておく習慣がないことを峰岸は知っていたのだろう。
忍び足で部屋に侵入する。
寝たフリを止めて怒鳴るという選択肢もあったはずなのに、私は目を閉じたままじっとしていた。
「沙奈、」
ベッドが軋み、峰岸が腰掛けた。
眠っていることを確認したら出ていくだろう。
狸寝入りを続ける。
―――――が、
唇に違和感を感じて、
思わず目を見開いた。
――――えっ、、
目の前には峰岸の顔。
そして、私の唇に触れた彼のソレ。
突然のことに驚き、身動きするどころか声も出せなかった。