愛のない部屋
目を閉じて私にキスをする相手が
本当に峰岸なのか、
信じられなかった。
頭が真っ白。
しばらくして離れた唇に、開けられた目。
そして、
私と同じように
峰岸は固まった。
「……っ、」
目を見開いた峰岸になにも言えずに、ただ呆然と彼を凝視している。
重なったばかりの唇は、甘い熱をもつ。
柔らかい感触がまだ残っている気がした。
「……ごめん」
沈黙を破った彼は真っ先に謝罪の言葉を口にした。
何故こんな不可解な行動を取ったのか説明して欲しい気持ちと、今すぐ部屋を出ていって欲しいと願う気持ちが合わさってなにも言えなかった。
部屋に侵入した時、
峰岸は私の名前を読んだ。
――沙奈、
甘い響きがこもった優しい声で、呼ばれた。
名前を呼んで良いと許可なんてしてないのに、
いつもは"おまえ"なのに。
なんで、どうして。
「峰岸、変だよ…どうかしてる」
あの手紙を見てから、オカシイ。
「ごめん、」
「……なんなのよ!」
訳が分からない。