愛のない部屋
荒々しくタオルケットを蹴飛ばして上半身を起こす。
「絶対、アンタのこと許さないから!」
出て行ってやる!
触れないという約束は見事に破られた。
「落ち着けよ!」
そういうアンタがまず落ち着きなさいよ。
ボストンバックをクローゼットから引っ張り出してその中に手当たり次第に突っ込む。
「なにしてんだよ」
強い力で腕を引かれ、ありったけの力でそれを振り払う。
「触らないでッ!」
そう言い放つと、すぐに離された腕。
暗闇にやっと慣れた目で峰岸の顔を見れば、とても疲れた顔をしていた。
「なんかあったの?」
私も冷静になろう。
「……」
「何か嫌なことがあってストレス発散のために、嫌がらせでもしてみた?」
「嫌がらせ?」
「私の嫌がることを、したじゃない」
手の甲でゴシゴシと唇をこすっても、さっきのキスを忘れることはできない。
「ごめん」
謝罪の言葉はもう求めていないのに。
「今日、楽しかった?」
皮肉を込めた言葉に、峰岸の眉がピクリと動いた。
「楽しい休日を過ごしたんでしょう?」
全てをお見通しだと、勝ち誇ったように言いのけるそんな自分が嫌なのに、口は勝手に動く。