愛のない部屋
「アンタの気持ちなんて分かるわけない。だからさっきからなんなのかと、聞いてるの」
「……言いたいけど、言えないこともある」
言いにくいことなら私だって沢山、胸に抱えて生きている。
でも今はそんな答えでは、納得できない。
「おかしな行動の理由は言えないってわけね」
「今は」
「いつ聞けるの?」
「……心の準備ができたら」
上手くはぐらかそうとしているのかと疑ってみたが、峰岸の顔があまりにも切なくて。
明らかに疲れている。
マリコさんと話がこじれたのだろうか。
これ以上、彼を非難することはできなかった。
昼間にタキの前で号泣してしまったが
本気で泣きたいのは
峰岸の方なのかもしれないと、
理由もなくそんな気がした。
「もう分かりました。実は一睡もしてないの。だから寝る」
再びベッドに潜り込み、峰岸に部屋を出て行くように命じる。
「あのさ、さっきは楽しい休日だと言ってたけどさ。アレなに?」
身に覚えのないような顔をして反対に問われても。
聞きたいのはこっちの方なのに。
「誤魔化したいなら、もう良いよ」
私たちの関係は平行線のままだね。