愛のない部屋
それ以上、口を開くなという忠告を込めて峰岸を睨む。
「夕食、作ってくれない?」
楽しみにしてたんだ、
なんて照れながら言われた。
「手伝ってくれるならいいわ」
「もちろん」
寝起きとは思えない程に爽やかな顔で頷く峰岸を見て、ほんの少しだけ心が穏やかになった。
「よし、餃子から作るよ」
「おう」
スーパーの帰り道、車の中で約束したじゃないか。
ずっと一緒にいる、って。
だからさ、
キスされたくらいで離れてなんかやらない。
大嫌いなはずの嘘をつかれても、
気持ちのないキスをされても、
離れたくないと思ってしまったんだ。