愛のない部屋
そんな流れがあって、
当日を迎えました。
「忘れ物ないな?」
「うん」
戸締まりを確認して、峰岸と表に出た。
タイミングよくタキの愛車が現れる。
「乗って」
半分ほど開いた窓からタキが言った。
峰岸の後に後部座席に乗りながら、助手席に座る女性の存在を目にした。
――タキの彼女。
「俺の彼女の舞(マイ)。もうじき奥さん」
楽しそうに言うタキさんの横で舞さんは振り返って私たちを見た。
「話に聞いてます!沙奈ちゃんですね。宜しくお願いします」
ハキハキと喋る。
明るくて頼りになるお姉さんという雰囲気。
短めの茶色の髪が彼女をボーイッシュに見せる。
悔しいくらいタキとお似合い。
「宜しくお願いします」
頭を下げれば、可愛い~と言われてしまった。
可愛いって…
「沙奈ちゃん、いくつ?」
「26です」
「4つ年下かぁ。妹、欲しかったんだよね」
タキが選んだ女性はおしとやかでも、繊細な美少女でもなかったけれど。
親しみやすい人柄でなにより嫌みのない人だった。
上手く接せれたらいいな。
タキを悲しませたくない。