愛のない部屋

温かい飲み物を買って車内に戻る。


「峰岸さんの趣味は?」


ドアを開けながら峰岸は舞さんを見て、「なんでしょうかね」なんて愛想のない返事をしていた。


そんな峰岸の対応にも嫌な顔をせずに舞さんは言う。



「峰岸さんはクールだっ」


「こいつはシャイなだけ」



サービスエリアで買った焼きそばを持ったタキが真っ先に車に乗り込んだ。



「沙奈さんは趣味なんですか?」



今度は私に振られた。



「実はこれといった趣味はなくて」


「そうなんですかぁ」



それから舞さんは自分の趣味について語ってくれた。


毛糸やビーズなどで物を作るのが好きだと言う。手先が器用なのだろう。



「後、私は絵を書くのも好きなんです」


「すごいです」



趣味をいくつかもち自己アピールをできる彼女に、ただ感心していた。




私にはなにもない。




「着いたら起こすよ」



喋り疲れたのか目が虚ろになっていた舞さんの頭をタキは撫でる。


優しい優しい手つきで撫でる。



「うん……昨日、あまり寝れなくて。楽しみで興奮しちゃったみたい」


「まだ1日は長いんだから、寝た方が良いよ」


仲の良い2人。
甘い車内から目を背けるようにぼんやりと外の景色を眺めた。


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