愛のない部屋
狭い空間。
「どうしてアンタも一緒なわけ?」
「目的地が同じだから」
傘に入れて貰った借りがある手前、これ以上の文句は言えなかった。
「酷い雨ですね」
「ええ。会社出たらこんな土砂降りになってて、災難ですよ」
「お疲れ様です」
運転手と峰岸の会話のバッグには、小さなボリュームでラジオが流れている。
外を眺めていれば、次第に重くなっていく瞼。
ああ、眠い。
疲れた。
「寝るなよ?」
こちらの様子に気付いたのか、偉そうに命令する男を無視する。
寝るもんか。
そう決意した数分後、
夢の中へ引きずり込まれた。
毎晩のように続く残業に、疲れきっていたようだ。