愛のない部屋

彼女の元へ駆け寄る。

「まだ修吾には会いたくないです」


それが舞さんの第一声だった。



「でも心配していましたよ」


私の言葉に舞さんは首を横に振った。


「この結婚、両親が決めたものなんです」


更に続けられた言葉は、


「修吾は私を愛してない」


悲しいものだった。


「どういうことですか?」



「それはあなたたち2人の問題だ」


先を促す私とは反対に峰岸は立ち入ろうとはしなかった。



「俺たちに伝えようとした言葉を全てタキさんに吐き出せばいい」


回りくどいことをするなというアドバイスは的確だと思う。でも誰でもいいから話を聞いて欲しい時だってあるじゃないか。



「私は舞さんの話を聞くよ」

「沙奈さん、ありがとう」



女同士で話した方がいいこともあるし。


「俺の言いたいこと、なにも分かってないだろう?」


呆れ口調の峰岸はなんだか怒っているようにも見えた。

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