愛のない部屋

「突然、好きな女がいなくなって滝沢さんはどんな想いをしてるのか分かるか?おまえのことを愛してないと本人から直接聞いたのかよ?」


「それは……」



舞さんが口ごもる。


「勝手に決めつけるな。他人の気持ちなんてそう簡単に見えるもんじゃねぇんだよ。同じように滝沢さんにはアンタの気持ちは分からないから、言葉で伝えなきゃ駄目なんだろ?不安になる前に本人にぶつけろよ」


いつになく饒舌な峰岸は舞さんに向けてではなく
、私にも言っているような気がした。


マリコさんとの関係を何も知らないのに勝手に決めつけるな。
そう伝えられた気がしたんだ。



「ごめんなさい……戻ります」


舞さんは峰岸の迫力に圧されたのか、小さな声で呟いた。


「じゃぁ行くぞ。俺、まだ温泉入ってないんだからな」


「……はい」


峰岸に続いて踏切を渡る舞さんの後ろ姿を見て、切ない気持ちになる。


そんな弱気になった彼女の背中をおした峰岸が、かっこよく見えてしまった。

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