愛のない部屋
2人きりで話したいというタキの要望に答え、私たちは部屋に戻った。
タキも探し回っていたようで息が乱れて汗も垂れていた。
「大丈夫かな?」
「さぁな」
無責任な返答。
「さっきは良いこと言ってたのに」
「他人のことにいちいち構ってられるか。俺は自分の恋すら上手くいってないんだからな」
畳の上にあぐらをかき新聞を読む峰岸は温泉にはまだ行っていない。
「好きだと何度言えば俺の気持ちは伝わるんだ?」
「……」
結局はまたこの話に戻るのか。
逃げていても仕方がない。
舞さんのように向き合おう。
「マリコさんがいるのにどうして私を求めるの?」
峰岸は新聞から目を離す。
「終わった恋なんだ。俺はおまえとの未来を考えたい」
「まだ好きなんでしょ?」
「……」
"好きじゃない"
そう即答してくれることを期待していたのに、しばらく何も言わなかった。
「もう、いい」
投げやりだ。
「はぁ?」
話を持ち出したのはそっちなのに、都合が悪くなかったからっておしまいにするの?
「マリコとの決着、つけてくる」
やましいことなんて何も無いことを証明するかのように、私をじっと見た。