愛のない部屋

「金、愛情、地位。その人にとって何が一番、大切なのかは違うだろうな。愛があったって金がなければ生きていけないし、順列をつけることはできないだろうな」


冷静な意見だ。
感情に流される私とは違う。


「ところでお嬢様」



だんだんと屋台が見えてくる。



「手を繋いでも宜しいでしょうか?」



あ、林檎アメもある。

うわ、綿菓子も美味しそう。



「姫様、聞いておりますか?」


――ヒメ?

姫様っていうガラでもないんだけど。



「ごめん、屋台に夢中になってた」


「祭りが好きなんて、なんか意外。おまえは文化祭とか面倒くさくて欠席するタイプかと思ってた」


文化祭……、
文化祭の思い出は、付き合っていたアノ人に別れを告げられたことしか残っていない。


「お祭り、初めてなの」


「え?今まで来たことないの?」


心底、驚いたような峰岸から目を離し、
キラキラ輝いて見える屋台の数々に目をやる。


「両親も友達も一緒にいく相手すらいなかったから」


こんな賑やかで人が集まるイベントに参加したこと自体が初めての経験。

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