愛のない部屋
ライオンは強くてたくましい猛獣。
誰にも頼らずとも生きていけるであろうその勇姿が羨ましい。
「ありがとう。大切にするね」
「珍しく素直じゃん」
「うるさい。次、たこ焼き食べたい!」
「へいへい」
腕を引かれて次はたこ焼きを購入。
食欲のそそる香りに、思わず笑顔になる。
「冷めない内に……、?」
じっとこちらを見る峰岸の視線に気付き、顔になにかついているのかと鏡を取り出そうとすれば
「やっと笑った」
なんて嬉しそうに言われてしまった。
「滝沢さんたちのことがあってから、全然笑わないんだもんな」
細かいところに気付く奴。
デートに女性が髪型を変えてきたとか、普通なら気付きにくいこともちゃんと褒めてくれるんだろうな。
「普段はツンツンしてるのにさ、おまえは笑うとすげぇ可愛いんだよ」
そう言って、目を少し細めて微笑む。
アンタの笑顔の方が何倍も素敵よ。
「早く食べないと、冷めるわよ」
照れ隠しに、たこ焼きを差し出す。
また峰岸に奢ってもらった物だ。