愛のない部屋

ライオンは強くてたくましい猛獣。
誰にも頼らずとも生きていけるであろうその勇姿が羨ましい。



「ありがとう。大切にするね」


「珍しく素直じゃん」


「うるさい。次、たこ焼き食べたい!」


「へいへい」



腕を引かれて次はたこ焼きを購入。

食欲のそそる香りに、思わず笑顔になる。



「冷めない内に……、?」


じっとこちらを見る峰岸の視線に気付き、顔になにかついているのかと鏡を取り出そうとすれば


「やっと笑った」


なんて嬉しそうに言われてしまった。



「滝沢さんたちのことがあってから、全然笑わないんだもんな」


細かいところに気付く奴。
デートに女性が髪型を変えてきたとか、普通なら気付きにくいこともちゃんと褒めてくれるんだろうな。


「普段はツンツンしてるのにさ、おまえは笑うとすげぇ可愛いんだよ」


そう言って、目を少し細めて微笑む。

アンタの笑顔の方が何倍も素敵よ。



「早く食べないと、冷めるわよ」


照れ隠しに、たこ焼きを差し出す。


また峰岸に奢ってもらった物だ。

< 166 / 430 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop