愛のない部屋

熱々のたこ焼きを頬張りながら、夜空に浮かぶ月を眺める。膝にはライオンが座っている。


「私、太陽より月が好き」


「なんで?」



ベンチに座って夜空を見上げる。


「暗い夜を照らしてくれているのは月だから。明るい昼間を照らす太陽よりも、大切な役割を果たしていると思わない?」


うん、と静かに返事をした峰岸の横顔を見つめていると、すぐに目があった。



「可愛いこと言うな?」


からかうように言われ、ムッとする。


「良いじゃない。私だって夢をみたい」


「夢みる姫は、結婚に憧れはないのでしょうか」



月から結婚へと、話が飛躍しすぎだ。



「憧れるほど、結婚って素敵なもの?」


「俺はおまえのウェディング姿が見たいな」


「はぁ?」


「きっと綺麗だから。太陽よりも、おまえに目を奪われるだろうな」


恥ずかしい台詞をさらりと言える男は恋愛経験が豊富なだけだ。騙されてはいけない。

甘い言葉に惑わされるな。


「俺はウェディング姿のおまえの隣りに、立つことはできるかな?」


それって、どういう意味?


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