愛のない部屋

探るように峰岸を見ても涼しい表情しか伺えなかった。


「でも今はライオンで良いや」


「ライオン?」


膝の上にのっているぬいぐるみを見る。愛嬌がある分、小さなライオンには狂暴さが欠落したようだ。


「ライオンのように強くあって、おまえを守るよ。ひとりにしない」



百獣の王と呼ばれるライオン。
強く、たくましい。


「私は守って貰われるような女じゃないわ」


「ばーか。いざ、って言うときに助けてくれる正義の味方がいた方が良いだろう」


「正義の味方?アンタには役不足。それに守ってやるとか、もらうとかはどうでも良い。私はアナタと対等でいたい、って前にも言ったでしょ」


優しさに包まれた温かい場所には縁がなかった。
家族も仲間も、誰一人として私を囲ってくれなかった。

今更、求めたりしない。


「対等?俺がおまえを好きな時点で対等にいられるはずがないだろう……お、最後のひとつ貰うぞ!」


「あっ」


許可した覚えはないのに、峰岸はたこ焼きに手を伸ばした。


「うまっ」



パクリと一口で頬張る。

峰岸の肩をバシバシと叩く。

甘い空気が消え去って、少し肩の力が抜けた。

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