愛のない部屋
マリコさんと峰岸のことで何か言いたいのかもしれない。
いつもハイテンションな彼に冷たく凍てつくような視線を向けられ、少し怖いとさえ思ってしまった。
峰岸とマリコさんのことを応援している篠崎としては、私は邪魔な存在なのだということは分かるけど。
あんな目で見られるくらいなら、例え罵られたとしても言葉として伝えてくれた方が何倍もマシというものだ。
「篠崎さん、言いたいことがあるなら……」
「なにも無いよ」
自分のデスクに戻り、書類を整理し始めた篠崎はさらりと言った。
「君たちのことで、口出すことは何もない。なにせ僕は部外者だから」
ふて腐れたような言い方。
峰岸になにか言われたのかもしれない。
マリコさんとのことだったら、同じように私も部外者なのに。
「君は君が思うままに行動すれば良い」
「そのつもりです」
「それならきっと上手くいくよ」
人が集まるオフィスで主語のない会話を繰り広げて、篠崎は会議があるからと慌ただしく出ていった。