愛のない部屋

「結婚を止めてみたらどうです?」

舞さんが魚介のパスタを勧めてくれた時のように、軽い口調で言う。



「それでもタキはアナタから離れないと思いますよ」


大勢の女性の中からタキに選ばれたのは舞さん。
でも彼女は分かってない。

タキのことを理解してあげられるはずの彼女は、押し迫る不安のせいで大切なことを忘れている。


「アナタの愛するタキはそんな人ですか?」


「……」



舞さんは黙り続けた。



「違うでしょ?結婚とかそんなの関係なく、タキはただアナタを好きなだけです」


もし峰岸がマリコさんとの恋愛を遊びだと言ってくれていたら、目の前の食事に集中できるのに。

私は気になって仕方がない。


峰岸が今どこでどんな話をしているのか、
そればかりを考えている。


本気の恋に、時効なんてない。



再会してまた恋に落ちてしまうことだってある。



峰岸の心は揺らぐかも、ーーしれない。

< 179 / 430 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop