愛のない部屋
時計の針の音に、神経が集中する。普段は気にならないその音が気になって仕方がない。
午前2時。
つまり日付が変わっても峰岸は帰って来なかった。
いつかの夜と同じ。
暗闇で天井を見つめる。
楽しい夜を過ごしているとしたら。
今ここで峰岸のことを考えている己はひどく惨めだ。
布団をかけ直したその時、
足音がした。
玄関からリビングへと廊下を歩く気配。
起きようか。
でも起きてなにを言う?
また口喧嘩になるかもしれない。
マリコさんと何もなかった?
そう素直に問えばいいのか。
「起きてる?」
ノックもなしに部屋に入ってきた峰岸は、
あの夜と同じように、ベッドに腰かけた。
どんな風に切り出せば峰岸を傷つけずに済むのだろう?
「寝てるの?」
起きてる、
そう返事をしようと目を開ければ
峰岸の顔が迫ってきた。
このままだと間違いなくキスされると思い、
峰岸の身体を押し退ける。