愛のない部屋

部屋の空気が冷たくなる。


「面倒くさい女は嫌いなんだよね。てめぇの安い身体くらい、喜んで差し出せよ」



峰岸から紡がれた言葉だとは思えない。

唖然とする私に更なる追い討ちをかける。



「マリコは可愛くキスをせがんで来たのによ。おまえとは正反対だ」


「マリコさんとキスしたの?」


「ああ。…それがどうした?」



肯定され、胸が苦しくなる。



「マリコさんとは決着をつけに行ったんじゃないの?」


「そのつもりだったけど、アイツが迫ってくるもんだから。話す余裕もなくて、そのまま……」


「もういい!!!」



聞きたくない。



「出て行って!」



枕を投げつけ、怒鳴る。

最低だ!



「はぁ?ここは俺の家だ。おまえが出て行け!」




――出て行け、



初めて言われた。



マリコさんとキスした事実よりも、
ずっとずっと痛い言葉。



胸に突き刺さる。



「明日にでも出て行ってくれ。キスのひとつもできない女と暮らしてても、楽しくないわ」



峰岸は吐き捨てるように言い、乱暴に部屋を出て行った。


バタンッ、
と大袈裟に扉が閉まり、


それを合図に涙が溢れた。

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