愛のない部屋
また、峰岸は嘘をついた。
真実を話してくれない理由は、私を信じられないからなのか。
すごく、すごく寂しい。
空を見上げれば、月が見えた。
あの人は言った。
空も泣くと。
もしかしたら……
ううん、きっと。
篠崎さんはこうなることを知っていたのだろう。
だからわざわざ私の元に訪れた。
私がどのような失敗をしても、冷静に、そしてさりげなくいつでもフォローしてくれた。
面倒見が良くて、お節介な上司を
今回は頼ってみようか。
舞さんがいる以上、結婚を控えたタキを頼るわけにもいかないし、
一晩だけ、篠崎の優しさにすがろう。
勝手に押し掛けることは気が引けて、篠崎の名刺を取り出した。
書かれた携帯の番号に、電話をかける。
『はい』
「……」
すぐに応答があった。
さてなんて言おうか。
『沙奈ちゃん?』
「はい……」
『部屋の番号は705だよ』
こちらの考えを見透かしているであろう篠崎に敢えて確認する。
「……お邪魔しても良いですか?」
『ああ、いいよ。早くおいで』
「ありがとうございます」
夜道で頼れる上司に頭を下げた。