愛のない部屋
冷凍していたお米でオムライスを作ることにし、手早く卵をかき混ぜる。
冷蔵庫を使う許可は初日に出たため、遠慮なく使わせて貰っている。
峰岸がシャワーを浴び終わるまでに作ってしまおう。
アイツだって早く寝たいはずだから。
そして何より私が寝たい。
「まだ?」
濡れた髪をそのままにして現れた峰岸は冷蔵庫からビールを取り出した。
「もうできるわよ」
お皿に盛り付け、顔も見ずに返事をする。
相変わらずむかつく奴。
ワサビでも混ぜて調理すれば良かったかも。
「悪いな」
「……」
なぜ急にそんな言葉を?
心の中で悪態をついていた私が子供みたいじゃない。
「料理ができる女、好きだわ」
「お世辞はいらないわ。気持ち悪い」
「はぁ?誰もおまえのこと褒めてないぞ?まだ食ってないからな」
「……アンタの好みなんて聞きたくないわ」
「あ、そう」
峰岸になんて興味はない。
峰岸だけじゃない。
私は誰にも興味がない。
別に自分が大好きとかそういうことでもなくて。
ただ私を含めた人間がみんなが嫌い。
例外はタキのみ――。