愛のない部屋
カッとなって頭に血が上ったから、飛び出して来たんじゃない。
部屋を出る前も、ホテルへの道のりでも、ずっと考えてた。
私と峰岸にとってなにをすれば良いのかを。
そして、結論を出した。
「私と付き合っていることに、してくれませんか?」
篠崎のポーカーフェイスが一瞬にして崩れた。
まさか私がこんな突拍子もないことを言い出すとは、思っていなかったのだろう。
「ごめん、よく理解できない」
「峰岸が決めたことだから、それを受け止めたいんです。恐らくアイツは、私でなく……彼女を選んだ」
マリコさんを優先にしたのだと思う。
「峰岸は人が良いから、私のことを捨てきれずに心配してくれると思います」
「だから……」
珍しく篠崎は口を挟んだ。
「だから俺と付き合っていることにして、峰岸を安心させたいんだ」
「はい。自分勝手なお願いだと分かっているけれど、どうしても……」
「君が望むのならばお願いを聞くよ。さっきも言った通り、君たちの問題だからさ。沙奈ちゃんが思ったままに行動すれば良い」
「篠崎さん……」